理想の相手を書き出す前に
「理想の2人」の絵を、一度だけ描いてみる

公開: 2026-08-01|監修: R(恋愛コーチング100名以上の支援実績/経営者)|恋愛コラム

「条件なら、いくらでも書けるんです。書けるんですけど、書き終わったあとに、なんだか虚しくなって」

婚活を2年ほど続けている方から、そう言われたことがあります。ノートには、年齢、年収、身長、喫煙の有無、実家との距離。びっしり埋まっていました。

この記事は、その紙を破ってくださいという話ではありません。書く対象を、一度だけ「相手」から「2人」に変えてみませんか、という提案です。

まだ条件表を作ってすらいない、という方にも同じ話です。むしろ、作る前に読んでもらえたらと思っています。

紙に描かれた2人の棒人間の絵とペン

書き出したリストは、いつのまにか「減点表」になる

理想の相手を書き出しましょう、というアドバイスは昔からあります。悪いことではありません。何も決めずに人と会い続けるほうが、よほど消耗します。

ただ、リストには変質する性質があります。最初は「こんな人と出会えたらいいな」という願いだったものが、何人かと会っているうちに、目の前の人がいくつ当てはまるかを数える表に変わっていく。願いの紙が、採点の紙になる。理由は、たぶん3つあります。

1. 項目が増えるほど、掛け算で人が消える

ひとつひとつは無茶な条件ではありません。けれど条件は足し算ではなく掛け算で効きます。半分の人が当てはまる項目を5つ並べれば残るのは32人に1人、10個で1000人に1人です。

厄介なのは、絞り込みすぎたことに自分では気づけないこと。会う人が減っているのか、条件で消しているのか、手元の紙からは分かりません。

2. 「普通の人でいい」の中身が、書かれていない

相談の場でいちばん多く聞いた言葉が「普通でいいんです」でした。けれど中身を聞いていくと、人によってまったく違います。ある人の普通は「怒鳴らない」ことで、別の人のそれは「休みの日に何をするか自分で決められる」ことでした。どちらも条件表には一行も書かれていません。 書かれていないのに、実際にはそこで判断している。

3. 条件は、不安の言い換えになっていることがある

年収の項目が「この先どうなるか分からないのが怖い」の言い換えだったり、実家との距離が「自分たちのペースを守れるか」の言い換えだったりします。言い換えのままだと、条件を満たす人に会っても不安は消えません。ここが、リストを埋めたのに虚しくなる正体だと思っています。

ここまでは、「いい人がいない」と言う前に見ていないだけかもしれない3つのことでも触れました。ただ、あの記事は「条件で見るのをやめよう」で止まっています。では代わりに何を見るのか。 その続きが、ここから先です。

主語を「相手」から「2人」に動かしてみる

やることはひとつだけです。書く対象を、相手ひとりから2人がいる場面に変える。

相手を書こうとすると、どうしても属性の言葉になります。年齢、職業、性格、価値観。人を要素に分けて並べる形にしかならない。ところが場面を書こうとすると、要素では書けなくなります。

書く対象出てくる言葉それで分かること
理想の相手年収600万以上/穏やか/清潔感目の前の人が当てはまるかどうか
理想の2人金曜の夜、片方が先に帰ってきて、テレビをつけずに待っている自分がどんな時間を過ごしたいのか

下の段には条件がひとつも入っていません。それでいて上の段より情報量が多い。テレビをつけずに待っている、という一行だけで、その家がどのくらい静かなのかが伝わります。

相手のリストは、当てはまる人を探す道具。場面の絵は、自分がどこにいたいかを確かめる鏡です。使う場所が違います。

なぜ、文字ではなく絵なのか

書くのではなく描くことをおすすめする理由は、精神論ではなく即物的なものです。文字で書こうとすると、人はすぐ条件に戻ってしまうから。

「理想の2人」と紙に書いて文章にしようとすると、おそらく「価値観が合う」「会話が続く」あたりが出てきます。それは場面ではなく、また属性です。文字は抽象に逃げられる形式なので、逃げてしまう。

絵はそれができません。線を引こうとした瞬間に、どこにいるのか、何をしているのか、どちらを向いているのかを決めなければならない。抽象のままでは1本も線が引けないのです。

「うまく描こうとしなくていいんです。棒人間で十分。ただ、その2人がどこにいて、何をしているかだけは決めてください。そこを決めた人から、話が具体的になっていきます」 — 監修者R

この方法は、願いが叶うおまじないとして紹介されることが多いようです。ただ、私(R)はそこには立ちません。起きているのはもっと地味なことで、一度はっきり思い描いた場面は、そのあと目に入りやすくなる——探しものをしていると街中でその色ばかり目につく、あれと同じ種類の変化だと考えています。

魔法ではなく、注意の向き先が変わるだけ。ただ、婚活ではその「向き先」がいちばん効きます。

やってみる — 3つの問い

紙を1枚と、ペンを1本。10分あれば終わります。

次の3つの場面を、それぞれ描いてみてください。上手さは関係ありません。棒人間と、床と、家具の線が数本あれば十分です。

顔は描かなくて大丈夫です。 むしろ描かないほうがうまくいきます。特定の誰かの顔を入れると、その人に合うかどうかの検討が始まってしまうからです。主役は相手ではなく、そこにいるときの自分です。

#描く場面この場面を選ぶ理由
何でもない平日の夜。2人はそれぞれ何をしていますか結婚生活の大半は、特別な日ではなくこの時間でできています
予定が何もない休日。2人はどこにいますか一緒にいる時間の心地よさが、いちばん出るのがここです
うまくいかなかった日。片方が黙っています。もう片方は何をしていますか関係が続くかどうかは、良い日ではなく、この日の振る舞いで決まります

そのまま使える枠

紙が手元になければ、この画面を印刷するか、スクリーンショットを撮って指で描いても構いません。

1何でもない平日の夜

2予定が何もない休日

3うまくいかなかった日

最後に、これを邪魔しているものをひとつだけ

描き終えたら、3枚を並べて、ひとつだけ確かめてください。

その絵の中の自分は、どんな顔をしていますか。

笑っていなくても構いません。むしろ、何でもない顔をしているほうが多いはずです。見るのは表情そのものではなく、力が抜けているかどうかです。

③でつまずく方がいちばん多いです。良い場面は描けるのに、うまくいかない日になると手が止まる。それは失敗ではなく、そこがまだ想像できていないという情報です。どうしても描けないときは、続くカップルとすぐ別れるカップルの決定的な差を先に読んでみてください。他人の例を見てからのほうが描けることがあります。

描いても動かないときの、たったひとつの手当て

理想の場面を思い描きましょう、という話は世の中にたくさんあります。ただ、そのほとんどが「描けば近づく」で終わっていて、描いたのに何も起きなかった人のことが書かれていません。 実際には、そういう方がいます。しかも珍しくありません。

理由は拍子抜けするほど単純で、頭の中で味わうと、それだけで少し満たされてしまうからです。理想の休日を鮮明に描いた直後、人は落ち着きます。手に入れたときの感じを先に受け取ってしまうからで、落ち着いた状態からはなかなか動けません。これは意志の弱さではなく、鮮明に描けた人ほど起きやすいという、少し皮肉な性質のものです。

手当てはひとつだけあります。

絵の隅に、「これを邪魔しているもの」をひとつだけ書き足す。

ふたつは書かないでください。ひとつです。
「土日はいつも予定を入れてしまう」「疲れていると誰にも会いたくなくなる」——そのくらいの、生活の中の具体的なもので構いません。

理想だけを見ていると人は落ち着き、障害だけを見ていると人は諦めます。2つが同じ紙の上に並んだときにだけ、そのあいだを埋める行動が浮かんできます。

絵が、眺めるものから、動くきっかけに変わるのはここです。

2組の夫婦が、同じことをしていた

実際に結婚した方々に話を聞いた中の話です。個人が特定されないよう、細部は伏せています。

1組目のご夫婦は、2人でお店をやっている場面を、出会う前からそれぞれ別々に思い描いていました。仕事も生活も、同じ方向を向いて並んでいる絵です。驚いたのは、片方だけでなく両方が同じ種類の絵を持っていたことでした。

2組目は、住まいの情景でした。こういう部屋で暮らしたい、という具体的な像を持っていて、実際にそれに近い場所で2人の生活が始まった。ご本人はそれを、引き寄せだと表現していました。

私は、そこまでは言いません。描いたから相手が現れた、とは考えていません。 ただ、描いていた人が、描いていない人と違う動き方をしていたのは事実です。

何が違ったか。迷う回数が少ないのです。誘いを受けるか、次に会うか、この人と続けるか。判断の場面で、絵を持っている人は早い。自分がどこに向かっているかを一度決めているからです。逆に絵が無いと、そのつど条件表を開き直すことになり、開くたびに採点が始まります。条件では辿り着けない相性の話は別の記事に書きましたが、根はここでつながっています。

テニスで言うと

コートでも同じことが起きています。初めてダブルスを組む2人を見ていると、上手い下手より先に分かることがある。相手が取れない球が来たとき、どちらを向くか。前に詰めるのか、下がるのか、何も言わずに拾いに行くのか。

ダブルスでネット際に並ぶ2人の後ろ姿
崩れた場面でどちらを向くかは、条件表には書かれていない
「ペアの相性は、点が入っているときには分かりません。崩れたときに出ます。そこだけは、練習では作れないんです」 — あつしコーチ(テニス指導歴30年)

③の「うまくいかなかった日」を描いてくださいとお願いしたのは、これと同じ理由です。関係が続くかどうかは、良い日ではなく崩れた日に出ます。

それと、コートにはもうひとつ特徴があります。向かい合わないことです。

ダブルスで組んだ2人は、2時間ずっと同じ方向を向いて立っています。バーのカウンターで隣に座るのと同じ構図が、2時間続くと考えてもらえば近い。向かい合って話すと沈黙が気まずくなりますが、横に並んでいると、黙っていても気になりません。

しかもラリーの最中は、心臓のほうが勝手に動いています。ドキドキしている状態で、隣に人がいる。 この条件が、狙わなくても揃ってしまう。ジェットコースターなら数十秒で終わるところが、コートでは2時間続きます。

3枚の絵で「力が抜けている自分」を探してもらいましたが、そういう場面は、実は探さなくても作れます。

そして、それはプロフィールには一行も書かれていません。条件表に載らないものを見るには、その人と同じ場面に立つしかない——コートで2時間過ごすと見えてくる5つの瞬間と同じ話です。

よくある質問

絵が下手でも意味がありますか

関係ありません。上手く描こうとすると、かえって構図のほうに気が向いて手が止まります。棒人間で十分です。

条件を書き出すのは、やめたほうがいいですか

やめなくて構いません。順番を変えるだけです。先に場面を描いてから条件を見直すと、いらない項目が自分で落ちていきます。

ひとりで描いていると、寂しくなってきます

それは、いま自分が何を欲しがっているかが、はっきり見えたということです。②の「予定のない休日」で手が止まる方は特に多い。描けたものが少なくても構いません。紙の上に一度出しておくと、次に人と会ったときの見え方が変わります。

描いたのに、何も変わりません

絵の隅に、それを邪魔しているものをひとつだけ書き足してみてください。理想と現実が同じ紙に並んだときに、はじめて動きが出ます。

まとめ

条件のリストは、使っているうちに減点表に変わります。だから一度だけ、主語を動かしてみてください。相手ではなく、2人がいる場面を描く。

描くのは3枚。何でもない平日の夜、予定のない休日、うまくいかなかった日。見るのは絵の出来ではなく、その中の自分から力が抜けているかです。最後に隅へひとつだけ、それを邪魔しているものを書き足す。

紙1枚と、10分です。

参考: 望ましい未来を positive に思い描かせると、それを問い直す/否定的に描く/中立的に描く場合より行動のエネルギーが低くなることを、生理指標と行動指標で示した4実験がある(Kappes, H. B. & Oettingen, G.「Positive fantasies about idealized futures sap energy」Journal of Experimental Social Psychology, 47(4), 719–729, 2011)。理想と障害を対にして扱う考え方(メンタルコントラスティング/WOOP)は、同じ Gabriele Oettingen による一連の研究にもとづきます。本記事の記述は、これらの考え方と、監修者Rのコーチング現場での観察によるものです。効果には個人差があり、医療的助言ではありません。

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あつしコーチ

テニス指導歴30年・独立プロコーチ。教え子から30組以上の成婚を見届けてきた現場の観察を基に、Love All Tennis のコラムを綴っています。


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