話を聞いてほしいだけなのに、
答えを言ってしまう人へ
「話を聞いてほしいだけなのに」
そう言われて、固まったことはないでしょうか。
相談されたから、ちゃんと考えて答えたはずです。それなのに、相手の顔が曇った。何がいけなかったのか分からないまま、その夜が終わる。
私(R)は恋愛コーチとして、100名以上の方の相談を受けてきました。この記事は、あの夜に心当たりがある男性に向けて書いています。女性が読めば、「なぜ伝わらないのか」の側が見えるはずです。
長く続いているご夫婦とカップル8組に、出会いから今までを順番に聞かせてもらったことがあります。夫側の話をたどると、ひとつの場面が繰り返し出てきました。意見を言う前に、一度受け止めている。その場面です。
「聞いてほしいだけ」と言われても、黙っていられない理由
まず、傾向の話をひとつだけ置いておきます。
男性は話を聞くと解決へ向かいやすく、女性は「分かってほしい」という気持ちが先に立ちやすい。そういう傾向があると言われていて、私の現場でもそう見えることが多いです。ただ、逆の人もいます。自分を点検するときの目安です。
敦さんと志保さんは、結婚して11年になります。取材のとき、敦さんはある喧嘩を振り返って、こう言いました。
「すぐ忠告が出ちゃうんですよ」
きっかけは小さなことでした。志保さんが、日々の引っかかりを口にする。敦さんは「こうするべきだ」と返した。そこから話が過去へ広がり、長い議論になってしまいます。
あとになって、敦さんはこう気づいたそうです。
「彼女はそこを言いたかった、それを議論して、すごい嫌な気分になりたかったわけじゃなくて。もっと、ちょっと今引っかかってるストレスみたいなことを、聞いてほしかったんだなって思ったんですね」
志保さんの側の言葉も残っています。夫は冷静で、物事を客観的に見てくれる。それは分かっています。それでも、こう感じていました。
「客観的に見れるということは素晴らしいことなんでしょうけども、どこか高みから見下ろして言われているような気がするんですね」
この食い違いが、この記事の中心です。答えの中身は正しい。それでも届かなかった。敦さんは見下ろすどころか、一生懸命に考えていました。その一生懸命さが、相手には上からの言葉に聞こえてしまう。
私が2006年から翌年にかけて受け持った16名の相談記録を読み返すと、「聞いてほしい」「アドバイス」という言葉が出てくる往復が、16名のうち7名にあります。
あなたが答えを言ったとき、相手の話は終わっていたか。一度、思い出してみてほしいのです。
コートで見てきた、話を最後まで聞けない人
一緒にサークルを始めるコーチは、指導歴30年で、教え子30組以上の結婚を見届けてきた人です。コーチは、コートで見た光景をそのまま話してくれます。
「『もっと前で打って』と指示が増えるペアと、『ナイス』しか言わないペア。不思議なもので、後者のほうが、相手のショットまで安定していく。30年の現場で、何度も見てきた光景です」
ここで引っかかるのは、指示の中身が間違っていないことのほうでしょう。「もっと前で打って」は、たいてい正しい。テニスは協力する競技なので、正しい指示は正しく聞こえます。それでも、ペアのショットは安定しない。
会話も、これと同じ形をしています。相談への答えは、たいてい正しい。正しいから、言いたくなる。言った瞬間に、相手のラリーが止まります。
コーチが参加者を見るとき、気にしている項目のひとつに「コーチがアドバイスをしている時、聞いているか」があるそうです。コートで2時間、その人の素が見えると言われるのは、こういうところにあります。
8組の夫側は、意見を言う前に一度受け止めていた

取材した8組のうち、いちばん長い正夫さんと和子さんは、結婚して34年になります。
子育ての時期、和子さんは帰ってきた正夫さんに、その日の大変さをそのままぶつけていたそうです。正夫さんは、どうしていたのでしょう。
「疲れてる時も話しかけてくるから、うんうんうんって返事だけしてね」
言い返さず、解決もしない。うんうん、と返すだけ。和子さんの側は、こう言います。「話すと気が済むんです」「パーッと吐き出すともうそれでスッキリしちゃう」。
正夫さんは、それを毎回聞いているうちに分かったそうです。
「聞いてあげればストレス解消されるんだったら、じゃあ聞いてあげようかという感じで、のんびりと」
34年の答えは、拍子抜けするほど簡単でした。同じ形にたどり着くまで、時間がかかった組もあります。
CASE 1|拓さんとのぞみさん
拓さんは付き合い始めの頃、のぞみさんが怒ると「混乱しちゃってどうしていいか分からないって状態だった」そうです。言い返せず、黙り込んでいた。のぞみさんはむっとして口をきかなくなる。冷戦のような時間が続きました。
変わったのは、拓さんが気づいた日です。「彼女は一見怒ってるようには見えるけど、どっちかっていうと理解してほしいとか、寂しいとか、そういう方の気持ちなんだなっていうのが、なんとなくある時分かって」。
それからは「とにかく彼女が満足するまでは聞く」と決めた。のぞみさんの側も、怒りをそのままぶつけるのではなく、伝え方が変わっていったそうです。二人は今、結婚しています。取材の日、のぞみさんは、怒ることがだいぶ減った、と話していました。
もう一組は、まだ結婚していません。交際5年目の悠さんとりなさんです。
CASE 2|悠さんとりなさん
りなさんは、言いたいことを溜めてしまうほうだそうです。溜まって、あるとき爆発します。悠さんはそれを「フンフンフンって聞いて受け止めてくれて」、最後はりなさんが泣いて終わる。
りなさんが話したくないときは、無理に聞かない。「私がどうしても話したくないっていうときは、聞かないっていう風にしてくれるんですけど」。待って、口を開いたら「そうかー」と返す。
悠さんの側には、ひとつだけ技術がありました。「自分で話を溜めている時って、口調が違うんですよね。口調とか空気が違うので、それが分かった時は、電話を切らずに、ちょっと今日どうしたのっていう話をすることはありますね」。
りなさんは取材の中で、大きな喧嘩の本当の理由をこう言い直しました。「私の気持ちをちゃんと受け止めてもらってないというふうに私が感じてたっていうことを、分かってほしかっただけであって、別に彼が何も考えてないとかそういうわけではない」。彼女がほしかったのは、正しい返事ではなく、「そうかー」の一言のほうでした。その一言が、5年続いている理由に聞こえました。
私が現場で伝えている聞き方も、この人たちがやっていることとほぼ同じです。相手が一生懸命に話しているときは、「○○だったんだね」と、聞いたことをそのまま返す。視線を相手に向けて、大きくうなずきます。意見を言うのは、相手の心が開いたあと。順番はそれだけです。
「答え」が届く瞬間と、届かない瞬間の違い
では、答えは言わないほうがいいのか。圭さんとゆかりさんの話は、その逆でした。
二人は付き合って8ヶ月。すでに一緒に暮らしています。同棲を始めた頃、ゆかりさんは自分のやることが後回しになって、ひとりで自分を責めていました。
「そういうストレスを感じてるよっていうようになって、そしたらじゃあこういう風にすればいいんじゃないとか」
圭さんの提案は、ちゃんと届いています。ゆかりさんは「2人で解決策を見つけていけて」と話しました。先に気持ちが出て、それが受け取られてから、提案が来た。敦さんのときと、中身はそれほど変わりません。違うのは順番だけです。
敦さんも、取材の終わりにはこう言っていました。
「自分の意見がすぐ出てきちゃうんで、その意見をとりあえず置いといてまず聞くみたいな。聞いて感じる」
意見を捨てるのではなく、置いておくのだそうです。置いた意見は、あとで出せます。
16名の相談記録で、私が相手に向けて何をいちばん多くしていたかを数えたことがあります。いちばん多かったのは「質問」でした。助言より多い。コーチを仕事にしている人間でも、答えを渡す前に聞いています。
心が開いたかどうかは、見れば分かります。声が緩む。目がこちらを向きます。そして向こうから、どう思うかと聞いてきたら、そこが答えを出す番です。
それでも黙っていられないときの、1つの言い方
答えが喉まで来ているのに黙っているのは、苦しいものです。私もそうでした。
そういうときに使える言い方が、ひとつだけあります。
受け止めてから聞くまでの、3歩
①「○○で、しんどかったんだね」と、相手の言ったことをそのまま返す
②相手がうなずくか、息をつくまで待ちます
③言いたいことがあれば、「ひとつ思ったことがあるんだけど、聞く?」と先に聞くのが、いちばん角が立ちません
③で「今はいい」と言われたら、そのまま置いておきます。言わなかった答えは、消えません。翌日に出しても、間に合います。
もちろん、あなたのやり方のほうが合う相手もいるでしょう。すぐに答えがほしい人だっています。ひとつの目安として、次に「話を聞いてほしいだけ」と言われた夜に、思い出してもらえれば十分です。
よくある質問
女性でも、話を聞くより解決したくなる人はいますか?
います。「男性は解決へ向かいやすく、女性は分かってほしい気持ちが先に立ちやすい」というのは傾向の話で、逆の人も珍しくありません。取材した8組でも、妻側が聞き役に回っている場面がありました。この記事は「男性はこうだ」と決めるためではなく、答えを言ってしまう自分を点検するきっかけとして書いています。
聞くだけで、意見は言わないほうがいいのですか?
言ってかまいません。順番の話です。相手の気持ちが出て、それが受け取られたあとなら、提案は届きます。取材した圭さんとゆかりさんは、ゆかりさんが「ストレスを感じてるよ」と言えたあとに圭さんの「こういう風にすればいいんじゃない」が届いて、二人で解決策を見つけています。
「話を聞いてほしいだけ」と言われたら、何と返せばいいですか?
相手が言ったことを、そのまま返します。「○○で、しんどかったんだね」の形です。そのあと、相手がうなずくか息をつくまで待ちます。意見があるときは「ひとつ思ったことがあるんだけど、聞く?」と、聞いてから言います。
逆に、相手が黙り込んでしまうときはどうすればいいですか?
話を聞いてほしい人と、黙って考えたい人は、求めているものが違います。傾向として、黙って考えたい人には、話しかけるより待つほうが合うことが多いです。その話は「彼が黙っていた30分、頭の中で起きていたこと」という記事にまとめています。
まとめ
「話を聞いてほしいだけなのに」と言われた夜に心当たりがあるなら、答えの中身を見直す前に、順番を見直してみてください。
長く続いている8組の夫側は、意見を言う前に、まず相手の話を聞き終えていました。34年の正夫さんは「うんうん」と返すだけ。11年の敦さんは、いまも「すぐ忠告が出ちゃう」と話していました。長く続いている人も、そこは同じです。
答えは、あとからでも出せます。聞き終える機会は、その場にしかありません。
私たちがいま始めているのは、テニスです。指導歴30年のコーチと一緒に、東京・品川で婚活のテニスサークルを、月1〜2回、同じ顔ぶれで会える形にしています。
ダブルスでペアがミスをしたとき、「もっと前で」と言うか、「ナイス」と言うか。2時間のうちに、その癖は何度も出ます。自己紹介では出てこないものが、コートでは出てくる。
コートに来れば必ずうまくいくとは言えません。8組の話も、あくまで8組の話です。ただ、答えを急がない人がどんな人かを、見られる場所があってもいいと思っています。
東京・品川で、月1テニス。
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